鋳造伝熱工学−鋳造設計の基礎−
新山英輔著 発刊日:2001.01 全229頁 発行所:(株)アグネ技術センター \3,800-
鋳造とは溶けた金属を鋳型に注入して冷却・凝固させて所定の形状を付与する成形法である。したがって鋳物の出来不出来は「いかにうまく溶融金属を鋳型に充填するか」と,「いかにうまく鋳型内の溶融金属を冷やすか」によって決まる。新山先生は,これらの命題を数値的,解析的に最適化する方法に関するご研究を一貫して進めてこられている。今回新山先生が著された「鋳造伝熱工学」は,伝熱・凝固に焦点を絞り,その基礎から応用に至るまでを大変理解しやすくまとめられており,鋳造工学・凝固工学を学ぶ学生,研究者のみならず鋳造技術者にとっても貴重な教科書である。伝熱・凝固計算というと難解な数式が羅列されたものが多いが,本書では数式についても丁寧に解説されており理解しやすい。また各章には種々の鋳造方法への応用例が豊富に設けられており,実際に数式の活用方法が体験できる。特に私たちダイカスト技術者にとって,アルミダイカストの凝固時間の計算法,金型温度の周期的定常状態を求める近似計算法,鋳ばりの発生問題等々のダイカストの伝熱・凝固問題の解析的取り扱いはすぐにも活用できる内容である。本書の随所に著された知恵を私たちの知識に取り込み,私たち自身の知恵に変換して現場での問題解決に,新しい技術開発に適用していけるものと確信する。是非皆様にお薦めしたい待望の一冊である。
西 直美
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